折に触れて、といっても木々がのべつまくなし語るのをやめるほんの短い期間、それも客の来ない明るい昼下がりなんかだけだとしても、店長はつい想像する、ばーは自分と一緒に死ぬためにここへ来たのではないか、と。ここでまことと出会ったというがあれは嘘じゃないか。あらかじめ父と言い交わした約束があって待っていた、とか。

だから父のすぐあとにやってきた姉と弟、あの幼い弟のはるについ自分を重ねてしまう。

父を森へいざなったことの自分への言い訳だろうか。すべては仕組まれたことと考えれば世の中少しは生きやすくなる。けれどそういうごまかしが通じないのがこの森であることを、店長自身が誰より知っていもする。

けれど、と店長は結局いつものように打ち消す。あれが父だと誰も教えなかった。ばーもまこともただいつもより浮かない顔をしてみせ、それでそうかと勝手に考えただけだ。そもそも、ばーが本当に母かどうかさえわかっていやしない。そう思っているだけだ。勝手に思っていることは強くて、弱い。その強かったり弱かったりすることに振り回されていてもしかたない。だから店長は打ち消した。 森は、ただ、強い。

打ち消すと店長は決まってギターをチューニングする。この森にいて自分が自分でいられる、それが唯一の術だとでもいうように。いや、本当にそうかもしれないけれど、店長はそれを自分で探しだした。ギターはずっと以前森へいざなった誰かの置き土産だった。

ギターを弾いて店長は歌い、森も歌った。森が歌うから店長も歌うわけではない。どちらも勝手に歌った。

ふと店長はギターを止めた。聞いたことのない音を聞いた気がしたからだ。はるの歌声もとぎれとぎれ、聞えた。また勝手な考えが巡って飛び出して行き、本当になる。

どちらでもいい、と店長は今日来る客を想像した。